SNS、メール、報告書、プレゼン資料……など、私たちは日常的に文章を書いています。現代人にとって「文章力」は、仕事・プライベート問わず、欠かせないスキルの一つとなっています。
「文章力を上げたい!」と考えている人の中には、このような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
- 「文章力」の本を読んでも、どうやって書けばよいのかわからない
- 文章を書く練習をしたいけど、何をすればよいかわからない
文章力を上げるには、「たくさん書くこと」と「人に読んでもらうこと」が重要です。しかし、練習方法が間違っていると、効果を実感できなかったり、上達するのに時間がかかってしまったりするかもしれません。
この記事では、教育業界や金融メディアで「わかりやすく伝える」「正しく伝える」ことについてのノウハウを蓄積してきた筆者が、「文章力を鍛えるための6つのトレーニング方法」について解説します。
文章力の構成要素
「文章力」とは、情報や意図を文章によって正しく伝える能力です。「文章力」は総合的な能力であり、さまざまな要素で構成されています。
- 題材を見つける発想力
- 素材を集める取材力
- 素材を適所に置いて話を組み立てる構成力
- 豊かな語い・表現力
- 読み手を説得する力 など
(小笠原信之『伝わる!文章力が身につく本』株式会社高橋書店)
上記の構成要素は、以下のように分類することができます。
- 1・2:文章を書く準備段階に必要な力(スキル)
- 3~5:文章を書く段階で必要な力(スキル)
3~5は、文章の上手い下手の直結する「スキル」といえます。
1・2も重要ではありますが、この記事では、「3~5:文章を書く段階で必要な力」を「文章力」と定義し、文章力を鍛える方法について解説します。
文章力を鍛えるために必要なこと
「文章力を上げる方法」が書かれた著書は、多数出版されています。文章力を鍛えるには、これらの書籍で学ぶのも一つの方法です。しかし、いくらインプットをしたとしても、「書くこと」をせずに文章力を鍛えることはできません。
筆者は、文章力を鍛えるために、必要なことは以下の2つと考えています。
- たくさん書くこと
- 人に読んでもらうこと
たくさん書くこと
文章は、書けば書くほど上達します。これは、さまざまな文章に関する書籍でも述べられています。
社会人や大学生向けの執筆指導を行っている、藤吉豊さんは、著書の中で書くことについて以下のように述べています。
文章上達の方法は、『とにかく書く、たくさん書く』ことです。文章の質は、書いた量に比例します。実際に手を動かさなければ、文章力は磨かれません。
藤吉豊『文章力が、最強の武器である』SBクリエイティブ株式会社
ギターがうまくなりたければ「ギターを弾く」、絵がうまくなりたければ「絵を描く」ほかありません。文章を書くのがうまくなりたければ、「文章を書く」に勝る上達方法はないということです。
人に読んでもらうこと
たくさん書いたとしても、自分だけが読む文章ではあまり意味がありません。
先述の通り、「文章力」とは「情報や意図を文章によって正しく伝える能力」です。
つまり、人に読んでもらい、その人に伝わったかでしか、「文章力が上がった」かどうかの判断はできません。
できれば、読んでもらった人に、感想や分かりにくかった点をフィードバックしてもらえるとよいでしょう。
上司の指摘でも、同僚の感想でも構いません。自分が書いた文章がどうだったか、フィードバックを受け取れる状況を作ることが重要です。
そのような状況がない場合は、プロの添削を受けるのもよいでしょう。
この記事では、「書くこと」と「人に読んでもらうこと」を前提としたトレーニング方法を6つ紹介します。
なお、インプットのためにおすすめの書籍については、こちらの記事を参考にしてください。
https://kakuskill.com/article-02002/文章力を鍛える6つのトレーニング
文章力を上げるための6つのトレーニング方法は、以下の通りです。
- 読みやすい文章を真似する
- 写真や絵を文章で説明する
- 本やテレビ番組を要約する
- X(旧twitter)で投稿する
- 議事録を率先して書く
- 書いた文章をじっくり読み返す
読みやすい文章を真似する
この記事を読んでいる人は、「もっと文章力を上げたい」と考えていると思います。
つまり、自分の文章と比較して、「こんな文章をかけるようになりたい」というお手本があるのではないでしょうか。
自分が「読みやすい」と感じた文章を、徹底的に真似してみるのが上達の近道です。
「学ぶ」の語源は「まねぶ」(模倣する)と言われています。学ぶことの基本は「まねる」ことです。
どんな文章を真似すればよいかわからない場合は、ニュース記事の書き方を真似してみましょう。
ニュースは、情報を「端的に」「わかりやすく」伝えることに特化したメディアです。文章力を上げるために、これに勝る題材はないと言っても過言ではありません。
筆者も、言い回しや表現に困ったときは、ニュース記事の表現を参考にすることがよくあります。
写真や絵を文章で説明する
静止画像を文章で表現するには、誤解なく伝える表現力が必要になります。
たとえば、次の写真を、誰かに「絵」に描いてもらうつもりで、文章にしてみてください。
解答例
4人の小学生が、桜並木を走っている。2人の女の子が、それぞれ赤色、ピンク色のランドセルを背負っている。
解答例の記述だと、「走っている順番」「男の子のランドセルの色」「桜は道のどちら側に咲いているか」などはわかりません。
正確に伝えるためには、情報の取捨選択と、提示順番が重要になります。静止画像を文章にすることで、これらのスキルアップにつながります。
このトレーニングは、だれかとペアで、ゲーム感覚で行うのがよいでしょう。
- お互いに画像を準備する
- 相手に画像を見せないように文章を書く
- 相手が書いた文章をもとに「絵」を描く
- 画像を見て答え合わせをする
本やテレビ番組を要約する
読んだ本や視聴したテレビ番組の内容を、要約してニュース記事として書いてみるのもトレーニングになります。
人が文字を読むスピードは、およそ1秒10文字です。ニュース記事は、1分で読んでもらうために600文字くらいで書かれていることが多いです。
600文字程度で誤解なく伝えるためには、情報を取捨選択し、文をわかりやすくシャープにする必要があります。
文字数の制限がある中で文章を書くと、長い言葉を短く言い換える練習にもなり、表現の幅が広がります。。
本やテレビ番組でなくても、題材は何でも構いません。興味のあるもので実践してみて下さい。
- 記者会見
- 映画
- マンガ
- アニメ
- Youtubeチャンネル
書いたものを、友人や同僚に読んでもらうのが一番よいですが、書いた内容を「話す」だけでもOKです。
「話す」ための台本だと思って書くと、文章のおかしなところ、論理展開がおかしなところに気づきやすくなります。
いずれにしても、アウトプットすることを前提にすることがおすすめです。
X(旧twitter)で投稿する
読みやすい文章を書く上での、一文の適量は40~60文字程度と言われています。たとえば、新聞は一文が60文字以内になるように書かれています。
「X」の1投稿あたりの文字数は、最大全角140文字です。40文字程度の文が、3文ということになります。
誤解がないように、わかりやすく、140文字に絞って書くのは、意外と難しいものです。少ない文字数で、情報を取捨選択して書くスキルを磨くことができるでしょう。
また「X」は、よい投稿であれば「いいね」や「リプライ(返信)」などの反応を受け取ることができます。
プロのライターや編集者もたくさん投稿しており、インプットとアウトプットが同時にできます。
議事録を率先して書く
会社員であれば、会議議事録を書くことで、効率よくスキルアップすることができます。会議議事録の作成には、以下のスキルが必要です。
- 短い文で書く
- わかりやすく書く
- 正確に伝わるように書く
これらはいずれも、「わかりやすい文章」を書く上で必須のスキルです。
読み手である会議出席者から、フィードバックをもらうこともできるため、文章力を鍛えるためにはとてもよい練習方法です。さらに、上司からは無料で添削をしてもらえる可能性もあります。
議事録作成は、仮に「文章が下手」だったとしても、せいぜい上司から小言を言われるくらいです。給料も減らなければ、バッシングを受けることもありません。
逆に、引き受けるだけで文章力が向上し、周りから感謝されます。さらに、議事録がわかりやすくなると、社内で一目置かれるようになります。
筆者は、20代の頃、この方法で文章力を上達させました。
会議議事録だけでなく、報告書や社内広報の文書など、「人が書きたがらない」文書を、書いて書いて書きまくりました。本当におすすめの方法です。
書いた文章をじっくり読み返す
一度書いた文章を、じっくり読み返すことも、文章力を鍛える上で欠かせません。プロのライターや編集者でもない限り、書いた文章を何度も読み返すことはあまりないでしょう。
しかし、わかりやすい文章を書くためには、「推敲」がとても重要です。コラムニストで経営コンサルタントの尾藤克之さんは、以下のように述べています。
書くことと同じくらい力を入れているのが推敲です。
尾藤克之『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』株式会社三笠書房
文章をじっくり読み返すと、「わかりにくい部分」「読みにくい部分」「日本語が正しくない部分」などに必ず気づきます。気づいた部分の修正を繰り返すことで、文章力は向上します。
書いた文章を読み返すときは、「黙読」と「音読」の両方を行いましょう。音読をすると、黙読の際には気づかなかった点が見えてきます。
まとめ:書く以外に道はない!
文章力を上げる方法として、6つのトレーニング方法を紹介しました。文章力を鍛えるためには、「書く→人に読んでもらう→フィードバック→書く」を繰り返す以外にありません。
この記事で紹介した方法は、必ずしも全部を行わなくてはならないわけではありません。自身の環境で、できることを探して実践してみて下さい。
本記事が、文章を書くすべての人にとって、文章力を上げる一助になれば幸いです。
https://kakuskill.com/article-02002/参考文献
- 小笠原信之『伝わる!文章力が身につく本』株式会社高橋書店
- 芝本秀徳『誰も教えてくれない 書くスキル』日経BP社
- 橋口幸生『言葉ダイエットーメール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術ー』株式会社宣伝会議
- 尾藤克之『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』株式会社三笠書房
- 藤吉豊『文章力が、最強の武器である』SBクリエイティブ株式会社
- 藤吉豊、小川真理子『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』日経BP社
- 山口拓朗『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則』明日香出版社