今回紹介する本は、『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(ダイヤモンド社)です。
著者は、ライターの古賀史健さん。
古賀史健さんは、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』などのベストセラーを生み出した、ライター界のトップランナーです。
本書は、「もしぼくが『ライターの学校』をつくるとしたら、こんな教科書がほしい」というコンセプトでまとめられています。
本書の概要
本書は文章を書く工程を、「取材」「執筆」「推敲」の3つのカテゴリーに分けて解説しています。
ガイダンス:ライターとは何か
取材
第1章:すべては「読む」からはじまる
第2章:なにを訊き、どう聴くのか
第3章:調べること、考えること
執筆
第4章:文章の基本構造
第5章:構成をどう考えるか
第6章:原稿のスタイルを知る
第7章:原稿をつくる
推敲
第8章:推敲という名の取材
第9章:原稿を「書き上げる」ために
取材:第1章~第3章
取材とは「何かを知ろうとすること」と定義し、そのプロセスを3章にわけて解説しています。「読む」「聞く」「考える」の3段階のプロセスで、取材における重要なポイントを紐解きます。
第1章では、おもしろい文章を書くには、まず「読者としての自分」を磨くことが重要とした上で、「読む力」の付け方を解説しています。
第2章では、「きく」ことを「聞く」「聴く」「訊く」に分類し、取材に必要な力としての「聴く力」と「訊く力」について解説しています。
執筆:第4章~第7章
本書の中心となる部分で、4章、230ページ(本書のおよそ半分)にわたって、丁寧に解説しています。
第4章~第6章では、文章の構造や構成の考え方、文章のスタイルについて。
第7章では、原稿に必要な要素を「リズム」「レトリック」「ストーリー」の3つに分けて解説しています。
ライターや編集者が日々悩み、「知りたい」と思っていることが集積されています。
推敲:第8章~第9章
推敲なくして文章は完成しない。そんなメッセージがひしひしと伝わってくる重要な章です。
自分が書いた原稿をどのようにして「客観視」するかについて、「時間的な距離」「物理的な距離」「精神的な距離」という3つの視点で解説しています。
ここでおもしろいのは「編集者とはなにか」について触れているところです。ライターと編集者の関係や、編集者はどのような存在であるべきかについて語られています。
全ライター・編集者の必読書
本書を読むことで、文章の見え方、文章の常識が大きく変わります。
いわゆる「文章術の本」には、「一文は短く」「主語と述語をねじれさせない」「『は』と『が』を使い分ける」といった、具体的なテクニックが書かれています。
しかし、本書ではこのような「テクニック」の解説は一切ありません。
たとえば、数学のテストのために「公式」を覚えたとしても、テストが終わればすぐに忘れてしまいます。本当に理解するには、「なぜその公式を使うのか」を理解する必要があります。
「なぜその公式を使うのか」の部分を、丁寧に解説しています。そのため、本書を読むことで、ほかの「文章術の本」で学んだ「テクニック」の理解が深まります。
「テクニック」よりも先に知っておきたい、「文章の基本」が詰まった一冊です。
私がもっとも「おもしろい」と感じたのは、「5章:構成を考える」の「絵本で構成を学ぶ」という部分。
「ももたろう」のストーリーを描いた30枚のイラストから、10枚を選んで「わたしの絵本『ももたろう』」を作るというワークです。
30枚から10枚に絞り込み、なぜその10枚を選んだのか明確な理由を考えます。
実際にやってみると、適切な構成を考え、情報を取捨選択することの難しさを痛感します。一方で、一度やってみるだけでも、構成を考える力が向上していることを実感できます。
「ライターの教科書」というコンセプトの通り、ライターや編集者を職業としている人向けの書籍です。
かなりボリュームがありますが、副業ライターも含めて、文章にかかわる仕事をしている人の「必読書」といえます。
価格:3300円 |