二重表現は、文章を冗長にし、稚拙な印象を与えてしまいます。しかし、意外と気づきにくく、知らず知らずのうちに使ってしまう場合があります。
この記事では、二重表現とは何か、よくある間違いのパターンや改善例、二重表現の見つけ方、そして例外のケースについても解説します。
また、二重表現100選を一覧で紹介します。
二重表現をマスターして、洗練された文章表現を手に入れましょう!
二重表現とは?
二重表現とは、「必ず必要」のように、同じ意味の言葉を重ねた表現のことです。
「二重言葉」や「重ね言葉(重言)」とも言われます。
「必ず必要」の場合、「必要」が「必ず要(い)る」という意味なので、「必ず」が重複している二重表現です。
「必ず必要」のように、同じ言葉が重なっている以外にも、「同じ意味」の言葉が重なっているケースがあります。
たとえば「約100mほど」は、「約」と「ほど」に、「おおよそ」という意味があるため、二重表現です。この場合、「約100m」「100mほど」と書くのが正解です。
二重表現のデメリット
二重表現は、無意識のうちに使ってしまうことが多いです。プロのライターでも、うっかり使ってしまう場合もあります。
しかし、二重表現が散見される文章は、相手に「稚拙な印象」を与えてしまいます。
また、文章が「読みにくい」「わかりにくい」原因になってしまう可能性もあります。
完全に間違いではない
ただし、二重表現は、必ずしも「間違い」と断定できるわけではありません。
許容される場合もありますし、逆に「雪が積もりに積もる」や「重ね重ね伝える」など、意味を強めるために用いる場合もあります。
しかし、「読みやすい文章」や「わかりやすい文章」を書こうとするのであれば、二重表現は避けた方がよいと言えるでしょう。
よくある間違い|2つのパターンと改善例
二重表現には、主に2つのパターンがあります。
- 同じ漢字が使われている
- 同じ意味の言葉が使われている
同じ漢字が使われている場合の改善例
同じ漢字が使われている場合、主に「修飾部分」や「動詞部分」が重なっています。
【誤】入場するには、チケットが必ず必要です。
【正】入場するには、チケットが必要です。
【誤】明日までに、メールの返信を返す。
【正】明日までに、メールを返信する。
【正】明日までに、メールを返す。
【誤】期日までに、お金を入金してください。
【正】期日までに、入金してください。
【正】期日までに、お金を振り込んでください。
【誤】一歩ずつ、前に前進している。
【正】一歩ずつ、前進している。
【正】一歩ずつ、前に進んでいる。
次のような場合は、ひらがなの部分を感じに置き換えると、二重表現になっていることがよくわかります。
【誤】あらかじめ予定していた通り、会議を行います。
↓
【誤】予め予定していた通り、会議を行います。
【正】予定していた通り、会議を行います。
【誤】長年工事をしているが、いまだ未完成のビル。
↓
【誤】長年工事をしているが、未だ未完成のビル。
【正】長年工事をしているが、未完成のビル。
同じ意味の言葉が使われている例
同じ漢字が使われている場合より、気づきにくいのが、同じ意味の言葉が使われている場合です。
【誤】いちばん最初に、資料の枚数を確認する。
【正】最初に、資料の枚数を確認する。
「最初」は「いちばん初め」という意味なので、「いちばん」が重複しています。ほかにも、「いちばん最後」「一番ベスト」などは頻出の二重表現です。
【誤】部下にすべてを一任する。
【正】部下に一任する。
【正】部下にすべてを任せる。
「一任」は「すべて任せる」という意味なので、「すべて」が重複しています。
【誤】寒くなってきましたので、お体ご自愛ください。
【正】寒くなってきましたので、ご自愛ください。
「自愛」は「自分の体を大事にする」という意味なので、「体」が重複しています。
二重表現の見つけ方
二重表現は、注意をしていても、うっかり使ってしまうことがあります。
では、どのようにすれば、二重表現を見つけることができるのでしょうか。
近くに同じ漢字がある
「同じ漢字が使われている」二重表現は、比較的見つけやすいでしょう。
近くに同じ漢字があったら、二重表現の可能性が高いです。しかし、ひらがなで書いてある場合は要注意です。
- あらかじめ予定する
- いまだ未完成
- 挙式をあげる
ひらがなの部分を漢字に置き換えて見ると、二重表現であることに気づきます。
- 予め予定する
- 未だ未完成
- 挙式を挙げる
熟語をがあったら意味を考える
二重表現の多くは「熟語」が関係しています。
特に、漢字二字の熟語を使う場合、言葉の意味を確認して使うようにしましょう。
たとえば、「断言」は「はっきり言う」という意味です。言葉の意味を考えれば「はっきり断見する」という二重表現を避けることができます。
なんとなくのイメージで言葉を使わないことが大切です。
Wordの機能を使う
Microsoft Office Wordには「重ね言葉」をチェックする機能があります。この機能をオンにすると、重ね言葉の可能性がある部分を下線で教えてくれます。
- 「ファイルタブ」から「その他のオプション」を選択
- 「文章構成」を選択
- 「Wordのスペルチェックと文章校正」の「設定」を選択
- 「文法とスタイル規則」の「表現の推敲」を表示
- 「重ね言葉」にチェック
二重表現に見えて例外のケース
一見、二重表現に見えて該当しないケースもあります。
- 歌を歌う
- 〇〇感を感じる(違和感・安心感など)
- 踊りを踊る
- 掛け声をかける
- 旅行に行く
- 賞を受賞する
たとえば「歌を歌う」は二重表現に見えますが、「歌」と「歌う」には意味の重複はありません。
漢字が重なるのを避けたい場合は、「うたを歌う」「歌をうたう」とするのがよいでしょう。
また「違和感」は「しっくりしない感覚」という意味で、「感じる」という動作は含まれていません。
同じ漢字を避けるのであれば「違和感を覚える」「違和感を抱く」とするのがよいでしょう。
二重表現 一覧表
最後に、二重表現を一覧で紹介します。特によく見かける重ね言葉には◯をつけています。
あ | 後で後悔 | ◯ |
あらかじめ予定 | ◯ | |
一番最後 | ◯ | |
一番ベスト | ◯ | |
一票を投票 | ||
今現在 | ◯ | |
いまだ未完成 | ◯ | |
いまの現状 | ◯ | |
色が変色 | ||
インフラ基盤 | ||
後ろに後退 | ||
沿線沿い | ||
炎天下の下 | ||
お金を入金 | ◯ | |
お体ご自愛ください | ◯ | |
思いがけないハプニング | ||
か | 価格を値下げ | ◯ |
各項目ごと | ◯ | |
加工を加える | ||
過信しすぎる | ◯ | |
必ず必要 | ◯ | |
かねてからの懸案 | ||
過半数を超える | ◯ | |
元旦の朝 | ||
急に卒倒する | ||
挙式をあげる | ||
菌を殺菌 | ||
車に乗車 | ||
決着がつく | ◯ | |
原稿を寄稿 | ||
講師の先生 | ||
頭をうなだれる | ||
交流会パーティー | ||
さ | 最後の追い込み | |
最後の切り札 | ||
さらにいっそう | ||
辞意の意向 | ||
しばしば、何度も | ◯ | |
自分に自身がない | ||
射程距離 | ||
収入が入る | ◯ | |
従来から | ◯ | |
受注を受ける | ||
食事を食べる | ||
初心者の人 | ◯ | |
慎重に熟慮 | ||
尽力を尽くす | ||
数値の値 | ||
頭痛が痛い | ||
すべてを一任 | ◯ | |
すべてを総括 | ||
すべて全滅 | ||
製造メーカー | ||
雪辱を晴らす | ||
そもそもの発端 | ||
た | 第◯番目 | ◯ |
大別すると2つに分けられる | ◯ | |
だけに限定 | ◯ | |
だけに特有 | ||
断トツ1位 | ◯ | |
次の後継者 | ||
特に目立つ特長 | ◯ | |
な | 内定が決まる | |
長い景気の低迷 | ||
捺印を押す | ||
日本に来日 | ||
年内中 | ◯ | |
は | 排気ガス | ◯ |
ハイテク技術 | ||
はっきり明言 | ◯ | |
はっきり断言 | ||
初デビュー | ◯ | |
ばらばらで散漫 | ||
引き続き継続 | ◯ | |
左に左折 | ||
普段から常用 | ||
プロセス処理 | ||
返信を返す | ||
ま | 前に前進 | |
貧しい貧困層 | ||
まず初めに | ◯ | |
まず第一に | ◯ | |
まだ未定 | ◯ | |
満天の星空 | ||
ムック本 | ||
目指す目標 | ||
もう一度再考 | ◯ | |
最も最高 | ◯ | |
専ら専念する | ||
や | 約◯◯ほど | ◯ |
豊かな富裕層 | ||
より以上に | ||
読んだ読者 | ||
ら | 利用ユーザー | |
留守を守る | ||
連日、寒い日が続く | ||
わ | わだちの跡 | |
英数 | IT技術 | |
EV車 |
まとめ|二重表現を避けて洗練された文章を
二重表現は、完全に間違っているわけではありません。しかし、二重表現が頻出する文章は、読者に稚拙な印象を与え、読みにくくなります。できる限り避けるほうが良いと言えるでしょう。